--- holy day それはある寒い、冬の朝のこと 「こんの馬鹿兎!!」 「いてっ、痛いさアレンー!」 「それはこっちの台詞です!!」 目が覚めて、眼前の肌色に息を呑んで。身体を包む体温に、大きく溜息を一つ吐く。 それから額を擽る、朱色がかった赤い髪を思い切り引っ張って。もう片方の手で顎を掴んでベッドから押し出す。 毛布から出した腕が冷気に晒されて余計に腹が立った。 「今日は任務行かなきゃだから、って言ったじゃないですか!」 「でもアレンだって気持ちいってだだだ!お、落ちちゃうからアレン!!」 落とすつもりで押しているのだから当たり前だ。それなのに身体に巻き付けた腕を解こうとしないとは、どう言う事だろうか。 身支度や食事を早く済ませなければならない。1日で終わる任務だと聞いていたけれど、その分出発も早かったはずだ。 「身体、洗いたいんですけど」 「ちゃんと隅々までキレイにしてやったさー」 ほらね、と床に散かったティッシュの山を指差されて、不覚にも熱くなった顔を冷たい手で包まれた。 一体何がしたいのかと睨んで問うてみるけれど、いつもの笑顔と額への柔らかな口付けで誤魔化されてしまう。触れた温度差が心地良い。 「アレン、メリークリスマス」 唇が耳まで来たところで、囁かれた言葉に首を窄める。その後に続いた誕生日を祝う言葉に、一瞬何のことか理解できずにいたけれど。 「今、ここにいてくれて、ありがとう」 再び、今度は左頬に降って来た口付けに、目の前にいてぬくもりをくれるその人に、暖かさがこみ上げてくる。 今、幸せかと訊かれたら、きっと僕は首を横に振るだろう。この感情は幸せなんて言葉では表しきれないほどの思いだから。 「ラビ、」 言葉に出来ない気持ちを腕に籠めて、さっきまで回されていた力よりも強く、強く抱き締めて。 同じだけ返してくれるのに、どうしようもなく足りないと思ってしまう。 ずっと一緒に、なんてこと無理だとわかっているけれど。だからこそ今を大切の思うのだ。 我儘で身勝手なこの人が、こんなにも愛おしい。 「ありがとう」 重ねた唇。重なった言葉。心も、きっと * * * 2005/12/25 |
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