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「師匠」

そっと肩を揺すって

「師匠」

ベッドに肩膝を乗せて

「師匠」

鼻腔を掠める酒臭さに眉を顰めて、
一向に崩れることの無い穏やかな寝顔に顔を顰めて


「…ッ、師匠!!」

憤慨したのは不意に尻を触られたから

「――起きてるんだったらさっさと朝食済ませちゃって下さいよ!
僕もうペコペコで飢え死寸前なんですよお腹が煩いんですよ
昨日は夕方僕が買出しに行ってる間に何処かに行っちゃって
何時に帰ってきたかは知りませんけど食事を作る身にもなって下さい!」


「…煩い、少し黙ってろ。頭に響く」


頭を抑えて苦い顔をする、所詮二日酔いだろう
日付が変わったのを確認するまでは繋いでいた意識も彼の帰宅を知らない


「毎回そんなんじゃ困るんですよ!!」


行き先なんて考えなくても女性の処だとわかる
床に抛られた帽子の残り香と、師匠の疲れた声色で

そう考えると、怒りと共に何故か悲しみまで込み上げてきた


「…どうしてここに、居て、僕の隣で―…ッ」


引き攣る咽喉で必死に紡いでいた言葉は、途中で呑み込まれた


「…ん、っ…ふ、」


紫煙の苦味を押し付けられて舌が痺れる
両手でベッドを押し返しても、後頭部に添えられた片手に敵わない


怒りも悲しみも、切なさに摩り替わっていて
それすらも濁ってゆく意識に流される



顔の両横で力んでいた腕で、跳ねる赤髪を掻き抱く
そうして結局、全てを許してしまう羽目になる




「・・・・・・朝食が冷めないうちに、」




最後の抵抗の言葉すらも、了解の意を含んで








* * * 2005/7/3

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