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暑苦しさに無理矢理目を覚ますと、そこには撥ねた赤髪が―…



「………おい」

「何だ、神田」


夏も終りに近付いて、幾分か涼しくなった朝。

「あ、今の面白いな。何だカンダ、な?」

けれど、こんな暑苦しい奴の腕の中にいては元も子もない。
ベタつく身体にシャワーを浴びたい、後始末もしたい。

「取り敢えず退け、放せ」

抱えられている背中が暑くて苛苛する。
額と頬に張り付いた己の髪が邪魔で仕方が無い。

「……もう行くのか?まだ居ればいいだろう」

何故神田がクロスの部屋に、と言えば、任務報告のため執務室に赴いたところ
運悪く、実に珍しく、帰省していたクロスがそこに居たから。




報告もそこそこに連れて来られたこの部屋は、数年前と何一つ変わっていなかった。

「黙れ生臭神父、てめぇは愛弟子に顔でも出してりゃ良いだろ」

床で皺になっていたシャツを着込んで、コートを羽織って、首筋に軽く唇を押し当ててから、耳元で捨て台詞を吐く。

「…フン、」

耳に掛かった吐息も嘲いも、やはり数年前と変わらない。
変わったのはただ一つ自分自身の、奴に縋る心の弱さ。




独りだと、縋って啼いたあの頃と、冷めた心で分け合った熱、ただそれだけの違い。










* * * 2005/8/29

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