素朴な事




たまにはイイのかも、って

























■ converse ■

































今日は珍しく、任務もジジイからの呼び出しも無く暇で

ついでにいつもの如く、これといってやりたい事も無かった。

けど部屋に居たってつまらないわけで、要するに俺は暇潰しの目的で談話室に向かってる。




「あ、ラビ−!」




「あっれ−アレン、どしたの?暇人?」




前方からの聞き覚えのある声に首を傾げて其方を覗けば、

談話室の3人掛けソファを一人で占領する銀白髪が見えた。










「暇人って・・・、そうなんですけどね。ラビも暇なんですか?」




「そ、俺も暇人−。・・・て、何やってんさ」




ニヒヒ、と歯を見せて笑いながらソファの所まで来て、唖然。

膝丈の長方形な木製のテーブルと、アレンが膝を抱えて座ってるソファの上に散乱する、ソレ




「昨日、任務の帰りに商店街のくじ引きでお菓子屋さんのタダ券当てちゃって」




3等だったんですよー、とにこやかに話すその両手にも

生クリームたっぷりのショートケーキやら棒のささった色とりどりのキャンディーが窺えた。







「・・・・・・全部、食べんの?」




テーブルに置かれたワンホールのチョコレートケーキを指差して問う。

いや、ソファの右半分に積まれた饅頭の山を指すべきだっただろうか。




「ラビ、もしかして食べたいんですか」




実に嫌そうな、表情を隠そうとしてるけどバレバレ。

俺はそんなつもりで言ったわけではないのだから、ちょっと困る。




「・・・や、別に、アレンが腹いっぱい食べれば良いんじゃない?」




こういう時、相手に不快感を抱かせずに会話を続ける方法は多分知ってるほうだと思う。

それに見てるだけでお腹いっぱい。




「いいですよ、そんな。どうぞラビも座って下さい」




・・・・・・・・・気を、利かせたつもりだろうか




「あ、そう?んじゃ遠慮無く−」




けどまぁ悪気の無い笑顔で言われたら、断る理由も見つからない。

こちらも笑顔を返して向いのソファへ腰を下ろす。




「これなんかオススメですよ」




言って指示されたのは半円になったフルーツタルト。


パートシュクレにチョコレートがコーティングされて

上は桃やらベリー諸々やらで埋め尽されていた。




「葉っぱは苦かったですけど・・・」




ボソ、と呟いたアレンに笑みが零れる。




「ナパージュだろ?これは飾りだから食べなくて良いんさ」




「そうなんですか?知りませんでしたよ。ラビは物知りですね」




褒められた事に少し驚いた。




「ん、前に本で読んだからサ」




照れ隠しとか、そんな感じ。




「義父にも師匠にも皿の上のモノは全部食べろ、って教えられてたんで、僕」




頭を掻きながら俯くアレンに、また笑った。










こんな雰囲気は嫌いじゃないな、なんて片隅で思いながらタルトを口へ運ぶ。




「・・・・―あ、ウマイ」




「ですよね!僕もこれは特にオイシイと思いましたよ」




弾んだ声色で言ってくるその表情は実に子供染みていて

可愛いなぁ、なんて思った事は黙っていよう。




「これも貰ってイイ?」




タルトを食べ終わってから、手近で目に留まったジェリービーンズの袋を掴んで

棒の刺さったキャンディーの包装を躍起になって取っているアレンに問う。




「・・・・・」




返事が返ってこない。

多分、包装を取る事に必死で気付いていないのだろう。

また笑いそうになったけど、それは抑えて勝手にジェリービーンズを食べ始める。





さっきどうぞって言われたし。





それから俺はテーブルに所狭しと散ばった菓子の袋や箱を眺めてた。

このジェリービーンズも悪くないな。とか考えながら。





















「・・・・・・・・・、あ」














ふと、思い出した事。




「どうかしたんですか、ラビ?」


やっと剥けたキャンディーを咥えたまま、きょとんとした目を向けられた。


「あんね、そういえば今日、俺の誕生日だったさ」


今の今まですっかり忘れていたけど、今日は己がこの世に生を享けた日。


「またアレンより一つお兄さんになっちゃった」


茶化して言うと、アレンは意外にも怒りもせずに笑顔を向けてきた。






「おめでとうございます、ラビ」




飾られていない暖かいその言葉に、ガラにも無くはにかんだのは自然な事。












「ん、アリガト」



バースデーケーキも、ゴチソウサマ。

























沈み行く夕日に照らされて、

タルトの上、クランベリーが煌いていた。












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友情だよ、友情。
かなり急いて打ったので誤字・変換など発見されましたらどうか教えて下さい・・・!
何はともあれハピバラビー!!

2005/8/8















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