何て言うか、


可哀想?


誰がって、そりゃ






























■ ignore ■





























「んでさ―、そん時のコムイの顔が面白いの何のって!」


暮れ泥む空の紅を映した談話室。
暇を持て余していた俺は、鍛錬帰りに通り掛ったユウを捕まえて向かいのソファに座らせた。


「ふん、良かったな」


話し相手が見つかってかなり意気揚々と話す俺に相槌を打つユウとは目が合わない。
全く楽しくないのはわかってる。興味ないもんな、コムリンの事なんて。

それに機嫌が悪いもう一つの理由だって、


「何さユウ、アレンが任務で居ないからって拗ねちゃって」


「な、違・・・っ」


こういう時のユウはいつも以上にわかりやすい。
目線を合わせようとしないし、突然肩に力を入れるその素振り。


「んも―、ユウちゃんたら照れちゃっ」


「ラビ!」


六幻を抜刀される寸前で、背後から掛かった声に助けられた。


「おおアレン、任務から帰って来たんだ?お帰り―」


「あれ、カンダ!?どうして談話室なんかに居るんですか、珍しい」


見事スルーされた、堂々と、平然と。
凹んだ俺に見向きもせずに、張本人であるアレンはユウの隣に腰掛けた。


「うるせぇモヤシ。俺がここに居ちゃ悪いか」


「でも確かにユウが談話室に居るなんて滅多に無い事だもんな」


ソファの端に寄ったユウをからかうように、アレンに同意した。
ユウはフェミニストだな―、なんて思いながら。

………や、アレンは男か。





「前々から思ってたんですけど、」


またもやスルーされた気がするけど気にしない気にしない。


「何ナニ?」


身を乗り出してそう訊ねれば、目の前の光景の光景に絶句した。





ユウの腰に腕を回して、身体をぴったりとくっつけて


「カンダの方が僕よりほっそりしてると思うんですよ」


上目でユウを見遣るアレンの表情は飼い主にじゃれつく猫そのもの。
団服越しの胸板に指を這わすその行為は、
まるでそっち系のビデオでも見ているような気分になる。


「ッ……おい、モヤシ…」


アレンの行動に目を白黒とさせるユウを尻目にアレンは言葉を続ける。


「僕がモヤシなら、カンダは差詰めこの綺麗な髪、ですよね」


長い黒髪を指に絡ませて、悪戯に顔を寄せるアレンに
ユウはもう何も言えなくなっている。勿論、俺も。




「あ―、えっと……俺、邪魔?」


それでもこの上なく居心地の悪い場所から抜け出すべく、俺は努力してみる。
気を利かせてる、つもり。ユウにはどうかわからないけど。
だって無言で向けられてる目が怖いんだってば。ユウより、アレンの。


「つか、用事思い出しちゃった。ジジイに呼ばれてたんだっけ俺」


兎に角この場から離れたい、その一心で震える脚を牽制して立つ。
笑顔の仕方を忘れたように顔が引き攣ってるのが自分でもよくわかる。


「そうですか?じゃあラビ、また」


「ん、じゃね。ユウも」


満面の笑みで手を振られて、背中に突き刺さるユウの視線。
ごめん、ほんっとごめん。
明日はきっと、朝一番で殴られるんだろうな。
それでもってアレンには、スッキリした笑顔で挨拶されるんだろうな。

































「あらラビ、どうしたの?」


科学室の扉を控え目に開けると、リナリーと目が合った。


「ちょっとコムイに相談」


自暴自棄になりつつも、この気持ちは如何にかしたい。
モヤモヤした、この気持ち。





「なぁコムイ、どう思う?」


「ん―?」


「コ―ム―イ―」


機械のように次々と書類にハンコをポムポム押しているコムイに
こんな相談する事自体、無理だとはわかっているけど。


「アレンが怖いんさ、最近すっごく!!」


俺がユウに構っていると、露骨な嫌がらせをしてくるのだ。
と言ってもユウを誘惑するような行動を俺の目の前でするだけ、なんだけど
それがどれだけ俺を居た堪れない状態にさせているか、きっとアレンは承知してる。


「絶対あれは確信犯だって!」


「ん―、でもあの二人ってもうくっついてんでしょ?」


手を止めずに話す様はまさに神業、のような。


「だからって何で俺がとばっちり喰らわなきゃならないんさ」


自分が可哀想で仕方が無い。
仲間であるアレンに邪険にされて、ユウにまで睨まれて。


「まぁまぁ、アレン君も必死なんだよ、きっと」


そう言って笑って見せたコムイの表情の裏に、確かに楽しんでいる様が見えた。
結局楽しまれているだけか、そうか。








































爽やかな春の朝、

もう半ば吹っ切れて、足は食堂に向いている。

あの二人の事なんて気にしなければいいのだ。

アレンの態度だっていつか良くなる。改善されるはず。

信じていれば、きっと………





「あ、ラビ。おはようございます」


「………、はよ」


後ろから聞こえた明るい声色に振り返って、また気持ちが沈む。


「ここ、空いてますよ」


指差されたのはアレンの隣の椅子。

ユウが居ないところを見ると、食事のトレイを取りに行かされているのだろう。
今のうちに、気になっている事を聞いてみようか。


「……アレンは俺の事、嫌い?」


返事はノーだとわかっているけど、ききたくなる。


「…ああ、昨日のあれですか?」


やはり確信犯だったのか、と諦めた心で呟く。


「嫌いだなんて事、あるわけないじゃないですか」


「ホント?」


「ただ、カンダに必要以上に近付かないでくれればそれで良いですよ」


「…はい」


綺麗な笑顔で吐かれた予想通りの返答に、自嘲にも似た笑いが零れた。


「カンダ、こっちに座って下さいね」


蕎麦屋の出前のように積上げられたトレイをテーブルに置くのを手伝いながら
アレンがユウに指差したのは俺とは反対側のアレンの隣。
まだそんなに混雑していないこの時間帯にも拘らず、だ


「……おはよ、ユウ」


「カンダ、はいアーン」


「……………」































……………ああ、そうか

コムイは賢いな、俺は馬鹿だった。










知らぬが仏、って諺があったんだっけ












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黒アレン出動。神田さん哀れ。ラビは……ごめん?
書き方がころころ変わる自分の文…うーん

2005/8/28
















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